サクラメント川の横に面したキャンプサイトで寝泊まりしている。
いろいろな鳥がそれぞれの言語で鳴き、目の前の川には、魚が飛び跳ね、アザラシがそっとこちらを見ている。
ここでは、木々も太古からの移りゆく物語を刻んでいるのだろうか。
そんな中で土の上にマットも敷かず寝袋に横たわる。
眠っている間に大地が体に染み渡る。
ここサンフランシスコ湾周辺はかつて北米最大の湿地帯だった。
湿地帯は昔から先住民にとってスーパーマーケットのようだと聞いた。
そこにはたくさんの鳥や動物たちがいて、虫や魚に溢れ、そして食べられる植物が豊富にあった。
飲み水にも困らないこの湿地帯という場所は、たくさんの先住民が住みつき、だんだんと集団を作り、やがては異なる言語を使った先住民たちのグループが出来上がったと言われている。
ゴールドラッシュ以降、ほとんどの湿地帯は、開発された埋め立てられている。
それでも今でも残っているこの湿地帯で葦船のための材料を刈り取ることができることが僕らにとって奇跡のような幸いだ。
目標は5000束。
1日1人で30〜40束刈り取るペースだ。
先は長い、それはわかる。
ただ確実に言えることは、この刈り取ろうとする思いの向こう側に海を渡るアシ船の形がイメージできること。
このカマを動かすエネルギーは僕とつながっている仲間たちみんなの想いが肌感覚でわかる。
そして、仲間は人間だけではない。
この船が海を渡ることを自然の生態系そのものが応援してくれるように感じている。
このアシ船が海を渡ることで、僕ら人間たちの気持ちがより自然に寄り添うことができ、具体的に自然の言葉を知ろうとするきっかけになることを心に描く。
だからボクは今日もカマを動かし、この広大な湿地帯でアシを刈る。
未来には希望がある。
それは僕にとっての確信だ。 石川仁
今回は探検家、葦船航海士である石川仁さんを
お招きしてお話を伺います。
宇宙のような生態系、葦船はノアの箱船のように、
自然のエネルギーをたどり生命を運んで
航海をしていきます。
たどり着いた先で生命がつながっていく
私たちのルーツや大切なことを問い直す会です。
その船そのものを葦を刈り取り編んでいく、
壮大な夢に挑戦し続ける石川仁さんから
貴重なお話を伺います。
アメリカから帰国したばかりの仁さんから
リアルなエネルギーを感じてくださいね!
石川仁
20歳より世界を旅する。ラクダと共にサハラ砂漠単独2700km、アラスカでエスキモーの獣皮舟作り、南米ジャングルを丸木舟で川下り800km、アンデス・チチカカ湖を葦船で一周など、フィールドワークを通して先住民族の文化を学ぶ。
1994年葦船との運命的な出会いの後、国連の公式プロジェクトに参加。葦船で太平洋、大西洋をのべ13,000km航海。日本帰国後、自身でプロジェクトを立ち上げ、各地で大小様々な葦船を製作し、2005年高知県から伊豆諸島まで日本初となる葦船による外洋航海を行う。
各地で葦船作りのワークショップを主宰する他、葦船作りの指導・職人の育成を行いながら、2015年大型葦船による新たな太平洋航海の為のリサーチを開始。
2023年 サンフランシスコ ベイアリアにて、太平洋航海本番で想定している葦船1/2サイズ9mの試作葦船を製作。帆走性能のテスト航海実施に成功。2024年現在 サンフランシスコ〜ハワイへの葦船での太平洋航海に向けてプロジェクト「エクスペディション アマナ」進行中。
エクスペディション アマナでは、ポリネシア人がハワイ諸島に到達する以前にアメリカ先住民が草を束ねて作った最古の船アシ船(草束舟)でカリフォルニアから渡っていた可能性があると仮説を立て、新たな古代海洋ルートの可能性を検証し
葦船という古代の知恵との関わりを通じて、自然との調和、対話、持続可能な自然環境との関わり方など、葦船から学んだ感覚を伝えていくことが、葦船に魅せられた目的であり人生をかけた役割なのだと信じ、古き記憶を現代に呼び戻す時間の旅を続けている